糖尿病とタバコ
糖尿病患者さんの死因は、血管障害、悪性腫瘍、感染症が70%以上を占めており、その内訳では、第一位、肺炎、第二位、肺癌、第三位、心不全となっています。コロナ肺炎で、糖尿病の死亡率が3倍以上に跳ね上がることは報告されましたが、細胞性免疫能の低下した糖尿病患者さんは、もともと肺炎に非常に弱いことが既に知られています。そして注目すべきは、これらの糖尿病の死亡原因の上位の3疾患すべて、喫煙によっても罹患リスク、重症化リスクが上昇するという共通点を持っていることです。
喫煙は残存肺機能を低下させ、肺炎の重症化に直結することはコロナ肺炎でも明らかになっていますし、また喫煙による肺癌や虚血性心疾患のリスク上昇については言うまでもありません。タバコに含まれるニコチンやタールは、交感神経を刺激させることで血管を収縮させると同時に、血管内皮には酸化ストレスが蓄積させるために、動脈硬化も促進させ、心疾患のリスクを高めます。心筋梗塞のリスクは、糖尿病、喫煙でそれぞれ3倍程度上昇すると言われていますが、糖尿病患者さんが喫煙していると10倍近い計算になります。これらのことを考えると、糖尿病患者さんの予後の改善を考えた場合、最も避けるべきは喫煙である、ということを意識して糖尿病患者さんに接することが肝要です。
それではすでに喫煙習慣のある患者さんが、禁煙するとどうでしょうか。禁煙しても糖尿病の発症リスクや血糖コントロールは改善しないというデータがあり、おそらく、逆に間食が多くなってしまう患者さんが多いからと思われます。しかし、そうであったとしても禁煙指導は必要です。なぜなら、禁煙することで総死亡も含めた心血管イベントが3割も低下することが証明されているからであり、これらの結果は、糖尿病の悪化のリスクを大きく凌駕して、患者さんの予後改善に大きく寄与すると思われます。従って、喫煙させないこと、禁煙を指導していくことが日常臨床では非常に大切になります。