糖尿病と妊娠
2022年07月17日
糖尿病患者さんが妊娠を希望されたとき、母子の合併症を予防するため、妊娠前から計画的な妊娠を進める必要があります。日本糖尿病学会では、妊娠前の血糖管理目標の推奨として、HbA1c7%未満を妊娠が許容できる目安とし、理想的には6.5%未満を掲げています。
妊娠中はより厳格な血糖管理、すなわち、空腹時血糖が70~100mg/dl、食後2時間血糖120mg/dl未満、HbA1c6.2%未満をクリアする必要があります。HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖を反映する指標で、鉄代謝の影響も受けるため、妊娠中の短期間における血糖変動をより正確に評価できないこともあります。その場合は、貧血の影響を受けず、過去2~3週間の短期間における血糖変動を反映するグリコアルブミン(GA)を使用することもあり、その場合の妊娠中のグリコアルブミン(GA)は15.8%未満が目標です。
妊娠中は、食事療法、運動療法で血糖管理が不十分な場合は、即インスリン療法が必要になります。また胎盤を通過する経口血糖降下薬で治療中の場合も、インスリン療法に切り替えます。
妊娠中は、胎児が発育するにつれて、母体のインスリン抵抗性が強くなるので、妊娠経過中は、インスリン量が次第に増えていきます。そのため、適宜インスリンの量を調節しなければならないため、頻回の血糖測定が必要になります。
糖尿病患者さんが妊娠すると、食生活・生活活動量の調整やインスリン注射・血糖自己測定などの薬物療法をこれまで以上にしっかり行わなければなりません。ですので、糖尿病患者さんが安心して妊娠・出産をするためには、社会全体でサポートしていく必要があると考えています。