Q&A 第44回〈運動療法①〜解明されつつある運動で血糖値が下がるメカニズム〜〉
2013年01月25日
摂取した炭水化物は、腸でブドウ糖として吸収された後、膵臓から分泌されるインスリンの働きにより、ブドウ糖の半分は、肝臓にグリコーゲンとして貯蔵され、残りは筋肉や脂肪組織に取り込まれて脂肪の材料、あるいは、エネルギーとして消費されます。
筋肉へのブドウ糖の取り込みには、GLUT4と呼ばれる糖輸送担体が重要で、インスリンが筋肉や脂肪細胞に作用するとGLUT4が細胞表面に出てきてブドウ糖を細胞内に取り込ませます。従って、インスリンは、摂取した炭水化物を、血糖値として上昇させることなく利用する上で、非常に大切です。しかし、多くの糖尿病患者さんでは、肥満などが原因で、肝臓や筋肉などでインスリンの作用が低下し、食後を中心に高血糖状態になります。
それでは、運動はなぜ血糖値を下げるのでしょうか?慢性効果としては、当然、エネルギー消費によって脂肪分解が進み、肥満やインスリン抵抗性を解除できることのメリットがあります。しかし、特にインスリン注射をしている糖尿病患者さんは、運動することで、急激に血糖値が低下していくことを経験しているはずです。実は、この運動による急性効果は、筋肉が収縮することによって筋肉におけるAMPキナーゼと呼ばれる分子が活性化し、インスリンの作用とは全く無関係にGLUT4を細胞表面に出すことで筋肉に糖を取り込ませます。筋収縮が、インスリン非依存的に血糖値を下げるメカニズムは、最近になってわかってきました。
ですので、運動療法は、言わばインスリン作用を肩代わりするという、非常にありがたい効果をもたらしてくれるため、インスリン作用が低下した糖尿病患者さんを治療していく上で、食事療法と同様に非常に重要になるわけです。