Q&A 第42回〈糖尿病と認知症の関係〉
糖尿病患者さんは健常者に比べて認知症の頻度が、2から3倍高いとされています。肥満のある糖尿病患者さんでは、インスリンの働きが悪くなり、高インスリン血症になりますが、この状態がアルツハイマー型認知症の発症に深く関わっているとの報告があります。また、脳血管性認知症では、糖尿病以外の動脈硬化を促進させる高血圧症や脂質異常症などが大きく影響しており、これらの危険因子がある糖尿病患者さんは、血糖同様に血圧や脂質の管理もしっかり行なっていく必要があります。
血糖コントロールが悪化すればするほど認知機能は低下していくので、良好な血糖値を維持することは重要なのですが、低血糖も認知機能障害のリスクであるため、インスリン治療やインスリン分泌を促進する経口薬で治療を行う高齢の患者さんでは安全性の面も考慮し、血糖コントロールの目標をやや高めに設定し治療していくことも考えなくてはなりません。
65歳以上の高齢者のHbA1cの目標は、年齢割る10、たとえば、80歳の場合は、8%という意見を言うひともいます。すなわち、高齢者の場合の血糖コントロールの目標は、残りの人生の長さを考慮すると、血糖依存性の高い血管合併症よりも、むしろ、認知機能を重要視した治療、すなわち、低血糖や高インスリン血症を防ぐ方向にシフトするわけです。
せっかく血糖値を良くしても、認知症を発症し自己管理能力が低下してしまうと、糖尿病の治療の基本となる食事療法、運動療法を行わなくなったり、薬の種類や量を間違えたり、薬を飲み忘れたり、インスリン注射ができなくなったりなどで、重篤な低血糖や高血糖を招く危険性も増してきます。
血糖コントロールが良いからといって、認知症にならないとは言えませんが、糖尿病患者さんの認知症の発症を予防するには、やはり糖尿病をしっかり治療していくことが重要であります。