2018年の糖尿病治療を振り返る
日本の高齢化社会に伴い、高齢者糖尿病が激増し、糖尿病患者さんの、実に3分の1が前期高齢者(65-74歳)、3分の1が後期高齢者(75歳以上)という、超高齢社会に突入しました。
近年では、低血糖が認知症の発症を増やすこと、心疾患による死亡(突然死なども含む)を増やすことが明らかになり、これらを回避するため、やっと最近になって、高齢者を中心に、厳格な血糖管理より臓器保護を優先する治療の重要性が拡大した一年であったように思います。
発売当初はなかなか需要が伸びなかったSGLT2阻害薬、抗肥満効果が期待通りとはいかなかったGLP-1受容体作動薬ですが、いろいろな大規模臨床試験(EMPA-REG OUTCOME、CANVAS PROGRAM、LEADER)が発表され、心血管イベントを抑制効果や、糖尿病腎症の進展を抑制する効果が証明されたことなどにより、これらの薬剤が、わが国の市場で広がりを見せたことは喜ばしいことと思います。
特にSGLT2阻害薬による心不全予防効果は、従来薬では考えられないほどの効果があり、今後、心不全の適応拡大に向けて治験が始まったことは、高齢者心不全予防に対して大きな一歩と言えます。
一方、残念なこととしては、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドの発売が延期となったことです。この薬は、既存のGLP-1受容体作動薬より強力な食欲抑制、体重減少、血糖改善が期待された薬剤であったため、最も難しい糖尿病治療のひとつである肥満2型糖尿病において、大いに効果を期待していたのですが・・・。
また糖尿病関連機器においては、フラッシュグルコースモニタリングシステムがインスリン患者さんに適応になり、皮下に入れたセンサーによって、連続測定したグルコース濃度の変動パターンを知ることが可能となりました。来年には、持続インスリンポンプのデバイスも大幅に改良され、1型糖尿病患者さんにとっても大きな変革をもたらすでしょう。
今後も、糖尿病治療は、新しい薬やデバイスの登場でどんどん進化を遂げ、糖尿病患者さんに対して貢献しているものと確信しています。