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自己効力感を高めることこそが糖尿病治療の第一歩

2016年05月09日

 自己効力感とは心理学者アルバート・バンデューラが唱えた概念で、行動を実行する前に“これなら自分にもできそう”という気持ちになることを言います。自己効力感が高い糖尿病患者さんほど、食事への自己管理行動がとれるので、我々はこの自己効力感を高める指導ができるがどうかが重要になってきます。自己効力感を最も高めるのが、成功体験と言われています。成功体験は、患者さんのやる気を振い立たせます。長年身についたライフスタイルを変えることは容易なことではありませんから、患者さんの生活に合わせた、最低限できそうな目標を立てて、それをクリアすることで成功体験を経験してもらうのです。

 最近登場した糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、体重減少に有効な薬ですので、この成功体験の経験には最適な薬剤と言えます。SGLT2阻害薬を内服して、10kg、20kgと体重が減る症例を見かけるのは、まさしくSGLT2阻害薬の薬理作用から派生したと考えられる自己効力感の高揚の証拠なのです。また、個別栄養指導とは違う、conversation mapのような、患者さん同士で議論、交流する場も、自己効力感を高める効果があると考えられています。待合室で糖尿病患者さん同士が会話した後に診察すると、治療のモチベーションが向上していることにしばしば気付かされます。しかしながら、一方、従来のように、食事制限や運動の励行ばかりを強調するような生活指導は、その効果に疑問符が打たれています。これら旧来の指導法は、自己効力感とは無縁で、やる気がむしろ削がれる指導なのかも知れません。

 今年の箱根駅伝で優勝した青山学院大の原監督は、学生同士でいろいろ議論させ、また、目標タイムを持たせて少しずつクリアさせてやる気を出させる指導が功を奏して優勝したと言われていますが、まさしく自己効力感を向上させた成功例でしょう。以前に当院のスタッフが心理学の本を読んで指導にあたっていたことを思い出しますが、糖尿病患者さんの自己効力感を高めるためのサポートは、医師だけでなくコメディカルが大きな役割を担っており、我々はスタッフ一丸となって、糖尿病患者さんの自己効力感を高める指導に専念する必要があると考えています。

内科・糖尿病内科・消化器内科・肝臓内科 医療法人社団渡邉内科クリニック

糖尿病専門医・総合内科専門医
院長/医学博士 渡邉昌樹
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医・総合内科専門医
副院長 渡邉純代
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