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糖尿病の食事療法〜あらためて糖質制限食について想うこと2016〜

2016年08月10日

 最近、認知されつつある糖質制限食は、海外で提唱され、約20年前にも国内で流行ったことがあるダイエット法です。糖質とは甘いお菓子やケーキなどだけでなく、米、パン、麺、芋類に多く含まれるでんぷんなどのことをいいます。糖質制限食は、糖質の摂取量を減らし、蛋白質や脂肪などはいくら食べてもいいといった食事療法で、体重を減らし、血糖を改善させるため糖尿病治療としても再び注目を浴びるようになりました。糖質の摂取量を完全にカットしたやり方と最低130gは摂取する中等度の糖質制限食があります。糖質制限食を支持する先生が有益な科学的根拠を中心に、熱心に講演されていますが、現在のところ日本糖尿病学会は従来のカロリー制限食を糖尿病の食事療法の基本としています。

 当院では夕食の主食を抜くぐらいのマイルドな糖質制限食であれば治療の相談に乗るようにしていますが、極端な糖質カットは、蛋白質の過剰摂取となるため細胞増殖が盛んになることで癌に罹りやすくなったり、脂質の過剰摂取のために動脈硬化が促進され脳梗塞、心筋梗塞が増えてしまったりする懸念があるため賛同していません。人類が狩猟民族だった頃、肥満や糖尿病は殆どいませんでしたが、非常に短命でした。しかし、穀物の栽培が可能となり、安定した糖質の摂取が、相対的に蛋白質や脂質の摂取を減らし、人類の寿命を延ばしたことは疑いもない事実です。

 糖質制限食は体重を減らすことに効果があるのは事実ですが、これは、糖質制限食がやせる食事というのではなく、実際は食べたくても食べられない食事であるために全体のカロリーが減って体重が減る、ということが分かっています。私も医師として血糖管理をする上で、食事は野菜から食べましょう、冷めたご飯は血糖値を上げにくいですよ、と情報提供しながらも、お腹が空いたときの温かい卵かけご飯は最高に美味しいと思っている自分がいます。やはりお腹一杯美味しくたくさん食べられるのは、米、パン、麺が主役だからこそなんです。肥満の原因は糖質の取りすぎであることは間違いありませんが、だからといって糖質を極端に減らす、食べたくても食べられない食事療法が体に良いかどうかは疑問です。

 糖尿病の食事療法としてどちらが有用で安全な食事療法であるかの結論が出るまでには、もう少し時間がかかりそうです。

内科・糖尿病内科・消化器内科・肝臓内科 医療法人社団渡邉内科クリニック

糖尿病専門医・総合内科専門医
院長/医学博士 渡邉昌樹
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医・総合内科専門医
副院長 渡邉純代
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