Q&A 第48回〈あらためて糖質制限について想うこと〜後編〜〉
2013年05月31日
肥満の原因は実は炭水化物(糖質)だった、という驚きの意見は、あっという間に全世界を駆け廻り、過度な糖質制限へとシフトするようになりました。糖質だけを徹底して摂らなければ、太らない、血糖値も下げる、という理論は、確かに一理あります。多くの人が極端な糖質制限に走ったのも、この影響だと考えられています。我々は糖質制限を行っていた原始人に戻ったのだ、肥満も糖尿病もない、原始人を見習うべきだ、という極端な意見すらあったわけです。
しかし、この極端な糖質制限は、血糖を下げ、肥満も解消するにも関わらず、まだその詳細なメカニズムはわからないものの、大血管イベント、すなわち、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことが明らかとなりました。
そもそも、肥満も糖尿病にも縁のない原始人は、果たして長寿だったでしょうか?彼らは生殖年齢を超えると、すぐに死が迫るくらい短命だった、ということを決して忘れてはいけません。穀物の栽培が可能となり、安定した糖質の摂取が、人類の寿命を延ばしたことは疑いもない事実です。ですから、ここで重要なことは、糖質が肥満の原因になることをしっかり直視しつつも、糖質の摂取を極端に少なくすることは避けるべきである、ということです。
”糖”は、即座に燃焼でき、エネルギー源となる重要な栄養素であります。過剰な摂取にならないようにしつつ、必要な糖質を摂取することが大切です。ですから私は、従来の食事療法が難しい患者さんに対して、糖質の過剰摂取を防止することを主目的とした、マイルドな糖質制限に関しては、食事療法の選択肢として、残すべきである、と考えています。