Q&A 第36回〈食事療法③〜本当の糖尿病食とは?〜〉
わが国においての、糖尿病の食事療法は、カロリー制限と低脂肪が主流でありますが、ここ数年、欧米ではむしろ、糖質管理を中心に行う食事療法に変わりつつあります。実際の日常診療において、制約感の強いカロリー制限食では、初めのうちは実行できても、徐々にストレスが増え、逆に食事療法がうまくいかなくなり、血糖コントロールが悪化していく患者さんも少なからずいるのも事実です。そのような患者さんに、糖質を減らすかわりに、蛋白質や脂質などの食品はしっかり摂ってもよい糖質制限食を指導すると、血糖値は改善する上に、食事療法からのストレスは軽減されるどころか、対照的に食事に対する満足感を得ることで、脳内でのニューペプチドYも減り、過食が抑えられ、最終的にはダイエットにも繋がる患者さんがいることがわかってきました。また、醸造酒でなく蒸留酒であれば、適量の飲酒も大丈夫なので、お酒好きの糖尿病患者さんにも有効であります。
糖尿病の食事療法として、カロリー制限食、糖質制限食のどちらが相応しいのかは、現在、栄養学会等でも、激論中であり、結論が出ているわけではありません。ですので、今、我々にとってできることは、それぞれの食事療法のメリット、デメリットを理解して、患者さんに合わせた糖尿病食を提案することだと考えています。食事療法を遵守することは、薬物療法よりもずっと難しいのですが、やはり、食事療法は、糖尿病治療の中心であり、患者さんの関心も非常に高いのです。最近、メディアに取り上げられ、レシピ本が非常に売れている某食堂が何故、凄いのか?それは、食事内容への工夫を重ね、満足においしくたくさん食べられる健康に良い食事であることが、注目されている理由なのだと思います。
毎日、そんな食事を作ることは、簡単ではありませんが、これこそが本当の糖尿病食の基本としてあるべき姿なのです。