Q&A 第28回〈糖尿病は遺伝しやすい病気〉
当院でも親子、兄弟、姉妹で通院されている糖尿病患者さんがいらっしゃいますが、糖尿病の発症に遺伝的な背景が深く関与することが既にわかっています。遺伝子を作る成分、すなわちDNAはA(アデニン)、C(シトシン)、T(チミン)、G(グアニン)の4種類の塩基配列から作れていますが、この塩基配列のある場所が他の塩基に入れ換わる部分を遺伝子多型(SNP)と呼びます。今までに糖尿病の発症と関係するSNPがたくさん見つかっていますが、それらは単独で糖尿病を発症させるわけでありません。つまり、そういったSNPを持つと、体質的に糖尿病かかりやすいということがわかってきました。一つの遺伝子だけのSNPなら糖尿病を発症しにくくても、いくつかのSNPが集族した状態が、子に引き継がれ糖尿病を発症させやすくすること、これが、糖尿病が深く遺伝する原因と考えられ、こういう遺伝形式を多因子遺伝と呼びます。
2型糖尿病の場合、さらに生活習慣の乱れなどの環境的要素が加わって、糖尿病の発症に拍車をかける場合もありますが、両親がどちらも糖尿病の場合ならほぼ100%、どちらか一方糖尿病であれば50%、と言っていいくらい遺伝します。
一方、1型糖尿病は生活習慣とは関係なく、遺伝的な体質を持っていることに加え、ウイルス感染などを契機に、自己免疫にスイッチが入って発症するとことが、発症原因のひとつとして考えられていますが、そもそも発症率が非常に低い病気なので、たとえ両親のいずれか一方が、1型糖尿病だからといって、子が必ずしも発症するわけではありません。
1型糖尿病、2型糖尿病以外の遺伝性の糖尿病では、代表的なものに、肥満を伴わずに小学校から高校生頃に発症するMODY(若年発症成人型糖尿病)と呼ばれる糖尿病や、母親からのみ遺伝し、難聴などの特徴があるミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病などがあります。
とは言っても、今まで分かった原因遺伝子を全部ひっくるめても、全糖尿病患者さんの3%程度の原因にしかなりません。ですので、糖尿病は遺伝する病気と言っても、詳細は何も分かっていないと言っても過言ではないのです。