Q&A 第27回〈太りやすい薬と痩せやすい薬〉
糖尿病の経口血糖降下薬は、現在、主に6種類ありますが、体重を増やす作用をもつ薬は、インスリン分泌を促進するSU薬(アマリール、オイグルコン、ダオニール、グリミクロンなど)とインスリンの効きを良くするチアゾリジン誘導体(アクトス)という種類の飲み薬です。太りやすい体質の患者さんがこれらの薬を飲めば、肥満が助長され、薬の効きが悪くなっていく上、食事療法を頑張っても痩せにくくなるわけですから、糖尿病治療に対するモチベーションが下がってしまします。この点が、我々糖尿病の専門医の立場からするとデメリットが多いわけで、糖尿病専門医は、これらの薬を最小限に使用する傾向があるようです。従って、太りやすい患者さんは痩せやすい薬を飲むことが望ましいのですが、デメリットがあることを承知の上で、これらの薬剤を使用する場合は、食事療法と運動療法をしっかり行うことが、より重要になってきます。
一方で、体重を減らす作用がある薬は、糖質を分解する酵素の働きを阻害して、ブドウ糖の吸収を遅らせるα-グルコシダーゼ阻害薬(セイブル、ベイスン、グルコバイなど)や、インスリンの働きを高めたり、食欲を低下させたりする作用があるビグアナイド薬(メトグルコ、グリコラン、メルビン、ネルビス、メデットなど)が挙げられます。しかし、血糖を有効に下げる、という観点からすると、これらの薬だけでうまくいく患者さんは必ずしも決して多いとは言えないのが現状です。
なぜなら、日本人の糖尿病の病態は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性が混在している患者さんがほとんどで、ただ単に、やせればいい、という単純な患者さんだけではないのです。従って、個々の患者さんの病態に応じた薬の選択、ということが、非常に重要になってきます。患者さんの病態を適切に把握し、体重を増やす薬と減らす薬をうまく使い分け調節していくことが、我々糖尿病専門医の大切な使命のひとつ、と考えています。