Q&A 【号外】〈新世代の画期的な糖尿病治療薬DPP-4阻害薬とは?〉
日本人はインスリン分泌能が弱く、SU薬(スルホニル尿素薬)やインスリン注射を必要とされる患者さんが多いのが現状です。
そんな中、6番目の経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬という新薬が昨年の12月に発売されました。DPP-4阻害は、小腸から分泌される消化管ホルモンであるインクレチンの作用を増強させる薬です。
このインクレチンは膵臓からのインスリン分泌を促す作用や、血糖上昇作用があるグルカゴンというホルモンの分泌を抑える作用を併せ持つことによって血糖を下げる働きがあることがわかっています。
インクレチンには、その他にも、胃の動きを抑制して食欲を抑える作用、膵臓でインスリンを作って分泌する細胞であるβ細胞を増殖させる作用があり、これらは、いずれも糖尿病患者さんには非常に好都合な作用でもあるわけです。
糖尿病患者さんは、ご存知のように、高血圧や高脂血症を合併しているひとが多いのですが、糖尿病患者さんの血圧や脂質は下げれば下げるほどいいということは既に多くの臨床成績から明らかです。
しかし、血糖はというと、最近発表されたAccord試験などでも、下げれば下げるほど良い、とは必ずしも言いきれないことがわかってきました。なぜなら、従来のSU薬やインスリン注射で厳格な血糖コントロールを目指すと、どうしても過剰投与による体重増加や低血糖が出現し、これらが原因で合併症をむしろ増やす可能性があるからです。
その点、インクレチンは血糖が高いときだけ作用する薬ですので低血糖の心配がありませんし、体重増加も来たしにくいのです。従って、DPP-4阻害薬が画期的な新薬である最大の理由は、この従来の薬では難しかった厳格な血糖コントロールを可能にする薬剤になるのではないか、という点です。
現在、既に使用されている経口血糖降下薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬はインクレチンの分泌を促進することがわかっており、DPP4阻害薬と併用することで、よりインクレチンの活性を上昇させます。ですので、併用薬としては、ベストパートナーだと思います(ただし、現時点での併用は未承認です)。
当院でもDPP4阻害薬の処方を開始していますが、このDPP4阻害薬が、従来の治療薬の問題点を補い、2型糖尿病患者さんにとって良い効果が長期的に持続する薬物になることを期待しています。