
週1回持効型溶解インスリンアナログ注射液「アウィクリ」
先日の2025年1月30日に、週1回皮下注射型基礎インスリン製剤インスリンイコデグ(商品名アウィクリ)が発売されました。アウィクリは1週間分の基礎インスリンを1回で投与します。従来の連日投与の基礎インスリン製剤の約7倍の濃度で作られているため、皮下に投与する注射量は変わりません。アウィクリはインスリン作用の立ち上がりが遅いため、初回のみ通常量の1.5倍量で投与します。アウィクリの注射器は1目盛が10単位となっていて、10単位刻みで注射します。
従来型の連日投与の基礎インスリン製剤とアウィクリの効果と安全性を比較する目的でONWARD試験が行われました。2型糖尿病患者さんを対象としたONWARD試験では、概ね連日投与の基礎インスリン製剤よりも優れた血糖降下作用を示しましたが、アウィクリ投与後、2~4日後に低血糖が認められ、統計的な有意差はないものの、全般的にやや低血糖の頻度は増える傾向にありました。一方、1型糖尿病患者さんを対象とした試験では、連日投与の基礎インスリン製剤と血糖降下作用はほぼ同等でしたが、低血糖が2倍程度に増えていました。従って、1型糖尿病患者さんに関しては、アウィクリに切り替えるメリットはなかった、という結果でありました。
しかし、注目すべきは、このONWARD試験が、健康な糖尿病患者さんのインスリン注射頻度を減らすことを目的としており、達成されたHbA1cはどの試験も概ねHbA1c7%前後です。超高齢化社会である日本においては、認知症などのために自己注射ができない患者さんがアウィクリの対象患者さんとなることが予想され、そのため、HbA1cの目標も緩めの8%以下という設定になります。すると、敢えて厳格に血糖コントロールする必要もなく、低血糖のリスクをそれほど気にせずアウィクリを使用できると考えております。週1回なら、家族が打てる、あるいは訪問看護師が打てる、というインスリンの注射環境は、現在日本においては、極めて重要な地位を占めるのではないか、と考えています。