シリーズ経口血糖降下薬③速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
2020年11月30日
2型糖尿病患者さんは、食後、直ちにインスリンを分泌させる能力が低下しているため(追加インスリン分泌遅延)、食後の血糖が上昇してしまいます。この食後高血糖はグルコーススパイクなどとも呼ばれ、HbA1cの悪化のみならず、血管に対するダメージが増え、動脈硬化を来しやすい一因と考えられます。
速効型インスリン分泌促進薬は、2型糖尿病患者さんの食後のインスリン分泌の立ち上がりを正常化することで、食後高血糖やグルコーススパイクを改善します。24時間持続的にインスリン分泌を促進させるSU薬と違って、速効型インスリン分泌促進薬は、内服後3時間程度しか作用が持続しないため、次の食事の時間(空腹時)には、効果が切れます。ですので、低血糖の心配がそれほど要りません。また、半減期が非常に短い薬ですので、腎機能が低下している場合でも、比較的低血糖が起きにくい特徴を持っています。
この薬の欠点は、まず、空腹時が高くなっている患者さんでは、利きが悪く、比較的軽症(空腹時血糖140未満、HbA1c7.5%未満)の患者さんが対象になります。空腹時が高い場合は、その他の経口薬や基礎インスリンで空腹時血糖を下げてから使用する必要があります。作用機序の観点から、SU薬との併用は、保険適応上認められず、空腹時血糖をSU薬で下げる必要がある症例には使用できません。
また、1日3回毎食前と内服回数も多いため、高齢者や治療のアドヒアランスが悪い患者さんには不向きで、そういう場合は、個々の生活習慣に合わせて、朝夕のみ、または朝のみと回数を減らして対応します。
このように一長一短ある薬ではありますが、患者さんと相談してうまく使用すれば、非常に有用な薬です。