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もうひとつの糖尿病注射薬”GLP-1受容体作動薬”の現在

2017年08月19日

 糖尿病治療に使用される注射薬の代表的な薬物がインスリンであることは言うまでもありませんが、もうひとつの注射薬としてGLP-1受容体作動薬があります。本邦で発売されて7年が経過しましたが、現在、図に示しますように、4成分5種類の製剤が使用可能で、大きく短時間作用型と長時間作用型に分けられ、さらには毎日1~2回注射のタイプと週1回投与のタイプがあり、また、保険診療上、インスリンと併用できるものと併用できないものがあります。ですから、これらの各薬剤の特徴を十分理解した上で使い分けることが非常に重要です。

 GLP-1受容体作動薬は、膵臓に対してインスリン分泌を促進することで血糖値を下げますが、血糖が高いときだけにこの作用を発揮しますので、SU薬などの経口薬と違って低血糖を起こすことは非常に稀です。また、消化管、肝臓、腎臓、心臓、中枢神経などの臓器、組織にも働きかけ、多彩な生理作用を発揮することも知られており、中でも注目すべき事は、糖尿病性腎症の進展抑制、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の改善作用、認知症予防作用などのエビデンスも出始めてきている状況です。

 ここからはあくまで私的な意見ですが、これらの多くのGLP-1受容体作動薬の作用の中で最も重要な作用は、視床下部を介する持続的な中枢性食欲抑制作用であり、それによってもたらされる体重減少は、肥満糖尿病患者さんが多い海外では非常に有効です。しかしながら、この中枢性食欲抑制作用は血中濃度依存性のため、本邦で使用されるGLP-1受容体作動薬の多くが持つ用量設定に関する問題、すなわち、海外用量の半分しか投与できないことで、本来の効果が発揮できないケースが少なからずあります。このため、多くの先生方が治療に手応えを得られず、期待はずれに終わってしまい、当初の予想に反して、GLP-1受容体作動薬の市場は伸び悩んでいるのが現実と思います。ですから、比較的薬剤費のかかる薬物でもありますので、体重減少や血糖改善作用以外にも有益な効果があることを患者さんに理解してもらうことが重要であると考えております。また、来年早々には、セマグルチドという海外基準のGLP-1受容体作動薬も出ますので、そちらにも期待したいと思っています。

内科・糖尿病内科・消化器内科・肝臓内科 医療法人社団渡邉内科クリニック

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