高齢者糖尿病の治療のポイントとは
最近話題になっている高齢者のフレイルとは、筋肉量の低下(サルコペニア)や認知症などにより、身体活力が衰えてしまう病態で、要介護予備軍と考えられています。実はこの病態に、罹病期間が長くて血糖コントロールが不良な高齢者糖尿病が非常に深く関与することがわかってきました。その理由は、インスリン分泌の減少が筋肉量の減少につながること、また、高血糖の放置や低血糖発作が、認知症や脳梗塞の発症のリスクになることがわかってきたからです。今回は、高齢者糖尿病患者さんがフレイルにならないための治療の要点を記したいと思います。
糖尿病患者さんに大血管障害を発症することが多いことは今までも述べてきましたが、日本は海外に比べ、脳梗塞が約2倍、心筋梗塞が約0.2倍であり、また心筋梗塞は比較的若くて肥満者に多い傾向があります。また、糖尿病を持つ高齢者にとって、脳梗塞を一旦発症してしまうと、たとえ軽症であってもフレイルに陥りやすいので、脳梗塞予防を最重要課題に入れる必要があります。
糖尿病患者さんに対する脳卒中ガイドラインでは、厳格に血圧を管理することに加え、脳梗塞の発症や再発予防効果があると考えられる糖尿病薬が推奨されており、我々はこれらの薬剤を選択する必要があります。また認知症の発症予防に関しては、その大きな要因である低血糖に配慮した治療が重要になります。70歳以上はHbA1c7.5%未満と血糖管理目標を緩め、低血糖を起こさせない薬剤での治療が望ましいと考えます。また、薬剤の投与法にも工夫が必要です。高齢者の食生活は、規則正しい3回/日の食事でないことが少なくありません。家にいることも多く、間食や、一人暮らしなどでは欠食するケースもあります。また認知機能が低下してきた場合は、家族が服薬管理しなければなりません。従って、我々は、毎食前の薬や注射をなるべく避け、ライフスタイルに合わせて1回/日の内服や注射の投与を提案することが大切と考えています。