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新規経口血糖降下薬”SGLT2阻害薬”の処方のコツ

2014年12月01日

 糖尿病治療の経口薬として、新しい作用機序をもつSGLT2阻害薬が発売されて約半年が経過しました。SGLT2阻害薬は腎臓の尿細管のSGLT2によるブドウ糖の再吸収を抑制し、ブドウ糖を尿中に排泄することで、血糖値を低下させますが、それと同時に体重減少効果が期待できる薬剤です。

 このSGLT2阻害薬の効果について、糖尿病患者さんが当院にも相談に来られますが、基本的にはSGLT2阻害薬単剤ではHbA1c7%程度にまでしか血糖値を下げられませんし、比較的高価な薬剤でもあり、SGLT2阻害薬を血糖値だけを下げる目的だけに使用するにはもったいないと思っています。どうせHbA1cを7%までしか下げられないのなら、インスリン作用を増強することで体重を増やすと考えられるインスリン注射やSU薬などの投与を減らすことにより、体重をさらに減少させるという効果を期待します。なぜなら、仮にそれらの薬剤を減らすことで血糖値が上昇すれば、それに応じてSGLT2阻害薬によって排泄される尿糖はさらに増していきますので、SGLT2阻害薬の効果が最大限になり、体重減少作用もより増強していきます。治療薬が少なくなり、体重が減ることで、患者さんのモチベーションも上がっていきます。今までの治療は、薬剤を増やし、血糖値は下がっても体重が増えてしまうという悪循環でしたが、その負のスパイラルから脱却できるのです。

 要するに、SGLT2阻害薬は、ただ単に目先の血糖値を下げることを期待する薬でなく、まず従来薬を可能な限り減らしていくことで、体重をどんどん落とし、最終的に約5%も体重が減れば、肥満が解消されることによってインスリン抵抗性が改善し、その後、徐々に血糖値が2次的に下がっていくのを期待していく薬剤と、個人的には考えています。

  副作用としては、予想されていた多尿・頻尿、尿路感染症、ケトアシドーシス、脳梗塞に加え、皮膚症状などが報告されていますが、その中でも特にケトアシドーシス、脳梗塞などの大血管障害、重症低血糖に注意を払っております。SGLT2阻害薬投与の基本条件を、1)BMI25以上、2)70歳未満、3)eGFR45以上、4)大血管障害の既往なし、とし、また、1)水分摂取の指示(毎食時にコップ1杯)、2)利尿剤の中止(特にループ系)、3)シックデイの休薬を指示、4)SU薬やインスリン注射使用時は、空腹時血糖値130mg/dl以上、これら4点は、注意すべき重要なポイントとして、慎重に処方するように心がけています。

 上記に加え、SGLT2阻害薬は、血糖値が改善しやすく、脱水症や熱中症が怖い夏季より、体重が増え、血糖値が悪化しやすい冬季を中心に一定の期間で使用するなど、従来薬に比べてより処方の工夫やコツが必要になってくる薬剤であります。

 

内科・糖尿病内科・消化器内科・肝臓内科 医療法人社団渡邉内科クリニック

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