Q&A 第59回〈糖尿病と認知症③ ?どのような糖尿病治療の工夫が必要か?〉
2014年04月25日
前回でも申し上げたように、糖尿病患者さんは、認知症の発症リスクが高いことが知られており、認知機能の低下を防ぐには、糖代謝異常が分かったら、少しでも早くから治療を開始することが重要です。なぜなら、概ね、認知症の症状が出る10年前から、βアミロイドという認知症の原因である蛋白が脳内に蓄積することが知られているからです。ではどのようにすればβアミロイド蛋白の蓄積や認知症の発症を遅らせることができるのかというと、次の3点に注意して欲しいと思います。
高血糖の是正、HbA1cが7%を超えた糖尿病患者さんは、それ以下の患者さんと比べて約4倍、認知症の発症のリスクが増えるというデータがありますので、HbA1c7%未満を目標にする必要があります。
高インスリン血症の是正、インスリンを分解する酵素IDE(insulin degenerating enzyme)は、実はβアミロイドを分解することがわかり、高インスリン血症の患者さんは、このIDEがインスリン分解で大量に消費されるために、逆にβアミロイドが体内に蓄積するメカニズムが知られています。ですから、インスリン治療や、SU薬などのインスリン分泌系の薬の使用のついては、しっかり見極めなければなりません。また、運動療法は、最も効果的にインスリン抵抗性を改善し、高インスリン血症を回避する治療なので、高インスリン血症になりがちな糖尿病患者さんにおいては、積極的な運動療法が非常に有効となります。
低血糖を避ける治療、特に重症な低血糖は、1回起こしただけで、認知症発症リスクが2倍、というデータもありますので、低血糖はわれわれの認知機能に非常に悪影響があることを認識する必要があります。
以上のように、認知症発症予防には、日頃から、この3つを守ることが糖尿病患者さんにとって、重要であると考えています。