Q&A 第55回〈新しい肥満症治療薬?リパーゼ阻害薬?〉
2013年12月26日
肥満症があると心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすいことは、すでに周知されていることと思いますが、実臨床において、体重をコントロールすることは、なかなか難しいものです。すでに発売されている、食欲中枢に働き食欲を抑制させるマジンドールという薬がありますが、それとは作用機序が全く異なる、リパーゼ阻害薬と呼ばれる肥満症治療薬がもうすぐ発売されます。
脂質は、主に中性脂肪(トリグリセライド)から成り立っていて、食事中に含まれる中性脂肪は、消化管や膵臓から分泌される酵素であるリパーゼによって、脂肪酸とグリセロールに分解されます。この脂肪酸とグリセロールが腸から吸収されて小腸の細胞内で再び中性脂肪へと合成されます。つまり、リパーゼを阻害することによって、食事から摂取される中性脂肪の吸収を抑えることができれば、内臓脂肪の蓄積を抑制して肥満症を改善できるということになります。
このリパーゼ阻害薬は、内臓脂肪とともに、体重を減らすことで、間接的に、血糖、脂質、血圧の値を改善することも報告されており、食事や運動療法を行っても効果が不十分で、2型糖尿病と脂質異常症を合併した肥満患者さんが保険適用の対象となり、来年3月頃認可される予定と聞いています。
患者さんの立場からすれば、薬効に大きな期待してしまうのは、当然のことかと思いますが、リパーゼ阻害薬の有効性を検討した試験では、劇的な体重減少とまでは、いかないようで、個人的には、むしろ糖尿病、脂質異常症、高血圧症への良い影響を期待しています。また、副作用としては、下痢や脂肪便が少なからずあると言われており、その他の有害事象にも注意しながら適正に使用していかなければならないと考えています。