Q&A 第33回〈2型糖尿病のインスリン治療〜後編〜〉
2012年02月22日
インスリン注射は、大血管障害という観点からは、諸刃の剣であり、健常者に近い生活の質を維持しながら、長生きすることを目標にして、1日頻回のインスリン注射を行っているにも関わらず、脳梗塞や心筋梗塞といった大血管障害を防げなければ、これでは、本末転倒といえます。
結局は、血糖を正常化することがやはり一番大切であり、これが結果的に、β細胞にも動脈硬化にもいいのです。でも、その次に大切なのは、同じ血糖をコントロールできるのであれば、なるべくβ細胞由来のインスリンを活用する、すなわち、大血管障害のリスクを増やさない治療を優先したいというのが私の考えです。1回のインスリン注射は確かに食後血糖が治療できない症例が多いですので、その場合は、食後血糖を抑える作用をもつ薬の併用や、新たに登場しましたβ細胞に負担をかけずに、インスリン分泌を促進するインクレチン薬などの経口薬の併用も可能になりました。この患者さんは、どれだけβ細胞が残存しているのか、体重抑制に重点をおくべきなのか、食後血糖は抑えられているか、これらを総合的に判断して、インスリンと併用する経口薬を選択します。こういった、患者さんの病態に応じた治療法は、オーダーメイド治療と言われています。
このような考えから、当院では、最低限のインスリン治療を原則とし、欧米の糖尿病治療ガイドラインでも支持されているステップアップ治療を推奨しています。なぜ、神様が肝臓のすぐ手前に膵臓をおき、インスリンの全身作用を最小限にしたかをよく理解しながら、なるべく、β細胞のインスリンを、負担をかけずにうまく利用する治療を優先しています。