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Q&A 第31回〈2型糖尿病のインスリン治療〜前編〜〉

2011年12月21日

2型糖尿病患者さんに対して、1日4回のインスリン注射する方法(強化療法と呼びます)で治療を行ったほうがいい患者さんもいますが、私は、すべての患者さんに対して、いきなり1日4回注射する強化療法で開始し、それをそのまま継続してしまうのは、望ましいインスリン治療とは考えていません。インスリンの強化療法は、完璧な血糖コントロールを容易に達成できるというメリットある一方、治療が画一的で、個々の患者さんの病態を把握することをあまり必要としない治療法であります。また、最近の海外データでは、頻回注射は、むしろ体重増加や低血糖を増長させ、脳や心臓の大血管障害を増やす可能性が大きいという報告すらあるのです。

当院では、2型糖尿病患者さんに対してインスリン治療を開始する場合、基礎インスリンの1回注射から開始し、経口薬を駆使して併用して、それでもHbA1cの改善が不十分なら、超速効型インスリンを少ない注射回数から追加するといった、段階的に治療を強化していくステップアップ治療を中心にインスリン治療を行っております。

しかし、一時的に強化療法という選択肢はありえます。慢性的に血糖が高い状態は、インスリンやインクレチンの効きが悪かったり、インスリン分泌能が低下したりします(これを糖毒性と呼びます)ので、この糖毒性をシャットアウトするメリットを期待して、一時的に強化インスリン療法を導入することは、よくあることです。そして、強化療法を行って血糖が改善すると、インスリンの効きが改善したり、インスリン分泌が復活することによって、インスリン注射回数を減らしたり、経口薬に戻すことができるケースが非常に多いのです。

こういったステップアップ治療は、あくまで私の基本姿勢であって、糖尿病専門医の間ですら、異論があるところです。<次号へ続く>

内科・糖尿病内科・消化器内科・肝臓内科 医療法人社団渡邉内科クリニック

糖尿病専門医・総合内科専門医
院長/医学博士 渡邉昌樹
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医・総合内科専門医
副院長 渡邉純代
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