Q&A 第22回 〈糖尿病の新しい診断基準〜前編〜〉
2011年03月25日
2010年7月1日付けで、糖尿病の診断基準が改訂されましたので、まず、それからお話しましょう。
と申しましても、変更されたどの資料を見ても、糖尿病専門医の私でさえ難解で、到底、すんなり覚えられるものではありません。
ですので、ここでどのような内容に変更したか、ということを示すことは困難で、あまり意味がないものと考えます。
簡潔に申しますと、今回の改訂のポイントは、米国の糖尿病の診断基準の変更に習って、簡素化されたことです。
具体的には、HbA1cが血糖値と同等の判定指標となったことが挙げられ、今まで以上にHbA1cを重要視する、という診断基準の内容となりました。
HbA1cは、過去1、2ヶ月の血糖の変動の平均値を反映しているため、これまでも血糖コントロールのゴールドスタンダードとして用いられてきましたが、このHbA1c測定値が世界(NGSP値)での6.5%は、日本(JDS値)での6.1%に相当し、NGSP値とJDS値には約0.4%の差があることが分かったのです。
米国糖尿病学会はNGSP値での、HbA1c6.5%以上を糖尿病の診断基準に用いると報告しましたが、日本糖尿病学会は当面、日常診療においては、JDS値を用いることとし、今回、糖尿病を診断する上で、HbA1C=6.1%以上を全面的に重要視していくこととなりました。
ただ、HbA1Cだけでは、診断がつかない、見逃す症例も稀に存在しますので、従来の診断基準で重要視されていた早朝空腹時血糖値126mg/dl以上や75g経口ブドウ糖負荷試験のデータもある程度加味されますが、要は、HbA1C6.1%以上が糖尿病、で大筋はよろしい、ということが変更の趣旨であります。
<後編に続く>