Q&A 第15回 〈頻回注射法が正しいインスリン治療とは限らない〜前篇〜〉
2010年08月24日
インスリン治療を行っている患者が、厳格な血糖コントロールを目指すとしたら、従来は、頻回注射法が最も効果的な治療方法と考えられてきました。この頻回注射法とは、超速効型インスリン、あるいは混合製剤インスリンを1日2から3回注射する方法で、おそらく、この患者様もこのパターンだと思われます。
なぜ、この方法が重要視されてきたかというと、食後の高血糖が、脳梗塞、心筋梗塞などの大血管障害のリスクを増大させるということが証明され、ならば、その食後高血糖を下げれば大血管障害のリスクを減らすであろうという理論が支配的となったからです。
当然、毎食前に速効性のインスリンを打てば、食後高血糖が効果的に下がるであろうことは、誰でも理解できると思います。従って、この頻回注射法が、インスリン導入法として、スタンダードであった時期があります。
しかし、本当に頻回注射が理想的なインスリン治療かというと、そうとも言い切れないということがわかってきました。なぜかと言うと、頻回注射によって体重増加や低血糖という逆に大血管障害を増やしてしまうデメリットが生じ、食後高血糖を改善するメリットを凌駕する可能性があり、患者さんに注射の負担を増やすだけで、決して大血管障害のリスクを減らすことに繋がらない、という事が、最近の大規模臨床試験でわかってきたのです。
そんな中、最近、脚光を浴びているのが、BOT(basal supported oral therapy)療法と呼ばれるものです。
<次号に続く>